今年の大河ドラマは、低視聴率ばかり取りざたされてます。
もともと、大河ドラマの視聴率は馴染みのある武将が出てくる戦国時代や、よく知ってる江戸時代が数字を取りやすく、馴染みの薄い時代は落ちやすい傾向がある訳で。例えば戦国以前や幕末や明治〜昭和などは軒並み低い傾向にあることは否めません。
だから、清盛をやると知った時、視聴率的には厳しいだろうなと、ある程度予測していました。なにしろ「わしの知らん時代には、興味ない。もっと分かりやすくつくってくれ」という人を相手にするのですから。
始まってみると案の定で。
しかも今回は『源氏に対する悪役』と言う固定観念のある平清盛、平安末期という馴染みの薄い時代、名前が似ている登場人物(これでもだいぶ整理しているそうな)、美しい平安絵巻を期待したらリアルを優先して見づらい画面(どこぞの知事さんには『汚い』と言われましたっけ)と、逆風をさらに呼び込むような形で進めており。
そうして出た数字と言う評価には「ああ、まあ、仕方ないよね」と思ってます。
お金をかけて、ビジネスでやる以上、信頼を得るには一定の結果が必要で。それに数字として応えられなかった以上は、叩かれてもむべなるかなと考えています。
ただ。言うほどマスコミに対してがっかりしていません。
実際に観て、「面白くなかった」と離れていく人は仕方ないのですが。
イエロージャーナリストや『大衆の味方』のマスコミが、数字と言う目に見える表面だけすくって憶測で叩く様。それに釣られて観てもない人々が、これらのマスコミを鵜呑みにして、さも見た気になって「それいわんこっちゃない」と石を投げる様は。
ある意味いつもの風景で、特に歯牙にかける価値も無いと思っています。
とはいうものの、
…これ、真理ですよね(笑)
それよりも、数字と実際に観ている人々の熱さの差がかけ離れていることの方が面白く。これだけ低いと「つまらないから辞めろ」と言う声が多いはずなんですが。そうではなく、むしろ「マスコミでは悪く言われてるけど、私は面白い」「このままわが道を進んでくれ」的な応援が多く見られ、しかも熱い。
Twitterの『#平清盛』はもちろんですが(『#』をつけずに『平清盛』で検索すると、批判や中傷も読めたりするので、本当の意味での反応を知るにはその方がよいでしょう)。
特に『#盛絵』の盛り上がりが象徴的。
番組側が率先して呼びかけたものでなく、自然発生的に観た人が登場人物や観た感想をイラストにしてネットにアップし、それが広がって今ではプロアマ問わず大きな輪となり、NHK側が拾い上げて各地で展示会を開く流れになっているというもので。
こういう応援の形は、今まで見たことの無いものなので、とても興味深く思います。
他にも『
NHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率がワースト更新。どう思う?』のコメントとか。『
YOUTUBEのNHK 大河ドラマ 平清盛 メイン・テーマ』のコメントを読むと、支持している人の方が多い。
これ、『新選組!』でも経験した世間と観た人の『乖離』だったりします。
『新選組!』もずいぶん叩かれました。喜劇作家・三谷幸喜が脚本だから。主演が香取慎吾だから。役者が知らない若い人ばかりだから。『新選組』は薩長の人間を殺しまくった殺人集団だから。
実際、当時の視聴率は伸びず、中身を評価しないマスコミの格好の餌食になってました。が、実際に観ると緻密に貼られた伏線、文献を反映したシナリオ、役者さんの期待を上回る好演。
――一話一話を大切に積み重ねた結果としての、ある意味当然とはいえ――結果的に『
観た人の心に残る大河ドラマ』として、ベスト10に入っています。
私自身もとてもはまり、非常に面白く観てたのでよく覚えています。
日刊イトイ新聞のコメントも楽しみでしたしね。
あと、清盛に対する声には、
こういうデータもあるんですね。確かに、あの野心的な拵えは保守的な人には否定される傾向にあるかもしれません。
とは言うものの、私自身も当初は『平清盛』の魅力がよく分かりませんでした。仕事でやむなく飛び飛びで観てるせいもあるけど、「何かがイマイチ、ピンとこない」という印象は拭えませんでした。
同時に画面の端々で感じる新しい息吹、予定調和を否定したドラマの創造、予想を超える役者さん達の熱演、平家滅亡に向かって積み重ねられる伏線の数々、文献や記録を丹念に拾い上げて練られたエピソード、平安という時代の再現に挑戦するスタッフの熱気。これらを否定する気持ちには全くなれず
「分かった、批判覚悟で作るなら、思うとおりに進んだらいいよ」
という気持ちで見守っておりましたが。
ここに来て
「ああそうか、これを描きたかったんだな」
と納得することばかりです。
よくよく観れば、この役者さんもあのエピソードも『必然』だから登場したのであり、『てこ入れ』ではないということがよく分かります。そもそも必然しかないんだから、打算的かつ余計な『てこ入れ』なんて、必要ないんですな(あ、特番的てこ入れは歓迎です。ばんばんやっちゃってくださいw)
それに、失敗を煽るばかりのマスコミだけでなく、『
『平清盛』はなぜ苦戦しているのか』のように観た上で批評していたり、『
ドラマでアンチヒーローから脱却『平清盛』』と、観た上で(もしくは観た人の声を拾い上げて)評価したり、日経エンタテイメントで清盛を取り上げたりしてくれているので、『新選組』の時ほどささくれた気持ちにはなってません(笑)
「その時間で直接チャンネルを合わせた人だけをカウントする」視聴率ではなく、「観た人がだれだけ満足したか」の視質率を計ればいいのに。本放送だけじゃなく、録画や再放送も総計すればいいのに、と、よく思います。
とはいうものの、現存のシステムに依存する以上、低視聴率という記録を作ってしまった以上、スタッフの責任を問う声は厳しいものになるでしょう。しかし『平清盛』は、観た人の記憶に留まるドラマになるだろうと思います。それもTwitterというネットの声を巻き込んで、今まで見たことのない現象…創り手と観る側の新しい繋がりを現しつつ。
あと10話。このまま最後まで突っ走って欲しいものです。
余談:『ロードオブザリング 二つの塔』でセオデン王の爪の間が黒くなってたり、『タイムスクープハンター』のリアルで飾り気のない空気の作り方を観て「大河ドラマでもここまでやればいいのに」と常々思ってましたが、「画面が汚い」という声に「いやあ、無理だな」と実感。
再現しても、見る側に受け止める力がないとダメなんだと、妙な形で納得しました。