そんな訳で5巻です。年に一度のお楽しみです。
モーニングでツキイチ連載な上、ページ数も多くないから、本にまとめられるぐらいになるまで、それくらいかかっちゃうんですね。
お話しは基本一話完結。料理の手順を紹介しつつ弁護士のシロさんと、美容師のケンジのゲイライフな日常をベースに、淡々と続く物語…と、もう紹介する必要も無いんですが。
毎度毎度感心するのが、『淡々』の中に含まれる悲喜こもごもの塩梅の絶妙さ加減。『弁護士(社会人)としての目線』『仕事上で垣間見る依頼人の人間模様』『息子がゲイであることを受け止め切れない両親との葛藤』『ゲイ友達とのつきあい』『ケンジとの関係』が、短いページの中でそれぞれコンパクトに収めている点に、よしながふみ、と言う作家のセンスを感じてやまないのです。
5巻でも、佳代子さんの旦那さんが、「同じゲイだから仲良くなれるだろうと思って」とわざわざ小日向さんを連れてくる、無神経な親切心に傷ついたり(こういうのって悪意ないから、よけいに途方にくれるんだよなあ…)、里帰りした両親に、彼氏を連れてくるよう詰め寄られたり。
どの題材も突っ込めば途方もなくドロドロと深くなりそうなものを、時にコミカルに時にシリアスに描写しつつ、程よい距離感でまとめ、筧史郎と言う一人の人間の日常を浮き彫りにしているように思えます。
そんなシロさんが料理を作るのはもともと料理好きでもあるし、倹約のためでもあるし、料理でストレス発散ってのもあるけれど。ものすごーく「今、俺は生きてるんだ!」と言う『開放感』を感じるのです。そんな派手な描写は全然ないんだけど(笑)、他人を介さず、自分と言う存在を実感していると言うか。すごく淡々と作ってるので、そんな熱いものじゃないんですが(笑)。
と言っても、料理のためにシロさんが他者を蔑ろにする描写はどこにもありません。シロさんがご飯を作るのは、自分のためでもあり、食べてくれる誰かのためでもあるってのを、きちんと分かっているからでしょう。
シロさんは仕事にやりがいは求めないが手は抜かないし(そのせいでいろいろ損な役回りを背負わされてるし)、両親にげんなりしつつ行く末を心配したり、紹介されたゲイの人とは、その後友人付き合いをきちんと始めてるとか。
食材をきちんと使い切るように、シロさんは一日一日をとても丁寧に生きてる気がしており。いわば、まるで料理を作るように、シロさんは自分の人生を拵えてると思うのです。
で、その5巻ですが、まあやっぱりヒゲのジルベールと小日向さんでしょう。ジルベールうぜえちょううぜえええええwww
あと、あのレジのおばさんの態度を私がしたら、お客と社員さんにぶん殴られるなーと思ったり(考えてみるとウチのスーパーの接客教育って厳しいほうだなあ)、裁判員裁判って弁護士も鬱陶しいんだ…とかとか。
一番の気に入りは、シロさんがお母さんと一緒にトンカツを揚げるお話しだなあ。『年老いた母親と、並んで料理をする』だけなのに、行間からしんわりと幸せがにじみ出てくるようで。
まあラストはアレなんですが(笑
料理の話は、また別の機会に。