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『おおかみこどもの雨と雪』(追記あり)
夏、上映中に観にいきました。ずいぶん時間が経ったけど、もさもさと、まとめてみます。

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一言で言えば、「綺麗な、いい映画」でした。

「『おおかみ人間』と言う架空の生き物といえども、いずれ社会に帰属するんだ。それが人間側なのか、自然の掟なのかの差はあれど」
というのが、最初の印象。

雪と雨、ふたりの子供達の成長の軌跡としてみれば、充分に美しい映画です。

ただ、私にとっては泣くほどのものじゃなかったです。周囲から啜り泣きが漏れ、明るくなって「立てなくなるほど泣いたわー」と話してる声も聞こえたけど。それどころが、日が経つにつれてどんどん『もにょり感』が膨らんで、どうしようもなくもやもや。そのもやもやは、今も晴れません。




↓↓↓↓↓
この『もにょり感』、『サマーウォーズ』で「男達がもりもり食べるご飯。それを用意してる女達の苦労が描かれてない」って意見に通じるものがあるなと考えてました。実際、映画を観続けてるうちに、この手の違和感がどんどん膨らんでくることを押さえられなかったです。

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『サマーウォーズ』でのこの手の意見、私自身も薄々実感してましたが、あえて目を瞑ってました。この映画の視点は、あくまで「たまたま遊びに来た男子高校生」で、彼は「お客様」。その『お客様』に、身内の諍いを見せびらかす方がどうかしてるし、お話からしてその手のリアリティを提供するもんじゃないし。

映画そのものは、それ以外にもツッコミどころ満載で。だけど、スルーして充分楽しめたのは「『サマーウォーズ』は、男の子が夢みる、甘く切ない里帰りファンタジー」、そういう位置づけでいられたからです。


ところが『おおかみこども』では、『サマーウォーズ』でスルーした男子高校生の無邪気な憧れとノスタルジーの正体が、魚眼レンズ的に膨張し、歪んで露呈したようで。

『もにょり感』がどこに向かっているかといえば…うーん、まず『花が何考えてるのか分からない』からスタートだなあ。

前半、誰にも相談できず、追い詰められていく様に、実はかなり共感しなんですよね。幼児虐待してしまうお母さんの気持ち、シングルマザーが抱えるつらい現実をよく炙りだしてるなーと。

映画としても、「おおう」って期待できたんですよ。何度もつわりで苦しむ花を、おおかみおとこが労わるシーンとか、産婦人科の前で怖気づいている花とか。おおかみおとこの、死の無残さとか。現実味をうまく調整した、センスの良い映画だと予感してたんですけど。

だからこそ、子供達には笑顔な『だけの姿』に、逆に現実味が感じられなかった訳で。都会での、花親子を取り巻く環境が辛辣な分、よけいに花だけがぽわんと甘い夢のようで。そのアンバランス感が否めませんでした。

こっちだって、「おおかみおとこの貯金で引越し費用賄えるの?」とか「無職で都会暮らしで、生活費や子供達がボロボロにしてる家具の費用どこから出るの?」とか、余計で無粋な心配したかないですよw。…まったく、何でこんなことに気が散ってしまったかなあw

「この映画は花視点じゃなく、娘の雪の思い出視点」を踏まえても、ならばなおさら、花のリアルさが中途半端だったかもなあ。子供の思い出語りなら、獣姦シーンいらないし(笑)


先にも書いた序盤のシーン積み重ねで、妄想(想像ではない)を排除したリアルの積み重ねの中に、「おおかみこども」と言う大きな嘘を物語として確立させていくんだろうなと予測してたのですが。勝手な期待だったんですねえ。でも、これらのシーンの示すベクトルは、決してつまらない映画になるとは思えないのですが…うむむ。


「映画と言う『虚構』に落とし込むために、『現実』の何を取捨選択するか」の問題で、監督も脚本も充分に分かって描写しなかったと考えられるけれど、その選択理由が根本的に自分と合わなかったのだろうと思います。



本当は花は、不安で怖い気持ちをずっと堪えてることぐらい、分かるんです。お父さんの遺言だから、子供達を心配させたくないから…、だからこそ、『観る側』に少しでも不安を示し、分かち合えていれれば、このもにょり感は少しは減ったのかな……いや、うーん、解消しなかったかなあ(笑)

中途半端に『社会』を描いてしまったせいで、私の中ではどっちつかずになってしまって。それが絶対答えの出ないジェンダー方面に引っ張られるので、よけいもにょもにょ。

私の『もにょり』感の正体は、ストーリーの主軸が花なのか雪なのか、社会なのか空想なのか定まらない故の気持ち悪さと、仮に主人公と設定した時の『花』と言う人物の、現実味の無さに垣間見える母性神話になるのかなあ。

この、『ファンタジー』と『リアル』がうまく交わらず、分離したドレッシング状態になってるのが気持ち悪いのかなと言うのが、今のところの結論です。

…脚本、もちちょっと詰めた方がよかったんじゃないかなあ…つめが甘かったのか、詰めるつもりもなかったのか…(笑)

都会の描写は一切なし、ある日ふらりと引っ越してきた奇妙な母子が、田舎の人たちの(本当はあり得ない)善意に囲まれ、時折父親の思い出を語り、雨と雪が成長する軌跡を見せてくれれば、むしろ割り切って楽しめたのかも…でもそれだと、『サマーウォーズ』の焼き直しになるなw


とまあ、ストーリーについていろいろ言いましたが。動きについては全く文句ありません。気持ち良いほど、よく動きます。おおかみこども達とかほんっとに可愛いです。それが『口当たりのよさ』のひとつにもなってますね。



ところで、一緒に観にいった友人曰く。

「これを人間の物語と思って観るからもにょるのよ。狼の生態だと思ってみれば、腑に落ちることばかりだから」
という理由で、納得してるそうな。
「雪と雨の着地点もそう。メスは群れ(社会)に帰りオスとつがいになる。オスは一匹で群れから離れる。だから、ああなって当然」

…つまり、人間の姿をしてるけど、実は花は人間でなく狼の血族であって、人間社会に馴染めず自然に近い場所へ避難したと考えた方がいいのかも!かも! だったら頑なに『都会(人間社会)』を拒絶した理由にもなるかも(ならへんならへんwww

あと、雪の描写が具体的に対し、雨が省略気味なのは
「作り手が、女の子の生態をよく知らないからかも。『興味はあるけど分からない対象』って、細部まで調べるやん。それに対し、雨は男の子だから。伝え手は『すでに分かっていること』って省く傾向にあるやん。だから雨の描写があっさりしてるのは、男の子の生態をよく分かってるからと思う」
という分析も印象に残ったのでメモしときます。


【20131222追記】
先日のノーカットTV放映版を観て、改めて起こったことをメモ。

twitterや感想を賑わせる母親像に関する議論だけど、『果たして作り手はこの状況を望んでいたのだろうか?』ってことを考えるに、『いや、望んでなかっただろう』は容易に想像がつきます。あちこちのインタビューを読むに、作り手は純粋に花と子供たちへの共感を望んでいたのではないかと思えます。

それがズレてしまい、見る側に望まぬ議論を起こさせてしまった原因は、やはり脚本のツメの甘さと、作り手の『能天気すぎる理想像の取り扱い』に起因してるのではないか、と考えてしまいます。

感想で時折見かける「ナレーションは雪だから、この物語が雪が母親である花を回想している。だから母親無双であるのは当たり前」は納得の一方で、そうなると「花がおおかみおとことセックスするシーン」の異質感が拭えなくなる訳で。セックスに象徴されるけれども、子供を主眼に据えた場合、花の克明な都会暮らしは実は邪魔なんですよ。

で、「映画の主題は『花なの? 雪なの?』」に答えることなく、ラスト近くでさらに「表層は雨を心配する母親として、深層はおおかみおとこという男を喪う恐怖に怯える女として」の花がクローズアップされる。もう一人の子供である雪はほったらかしかよ!みたいな(笑)

ものっそブレているなあと。雪と雨ってタイトルにもなってるのに。本当は花が描きたかったの? みたいな。

作り手が描きたいことと、映画で描きたいことの二種類の融合が甘くて。その甘さが花という人物に作り手の『理想の母親』像に投射され、観る側の感情を逆立ててる、と考えます。


『おおかみこどもの雨と雪』は、間違いなくいい映画です。感銘を受けての涙は否定しません。しかし、やはり心の深い部分では疑問がもやもやします。それも望まない方向の疑問が。以前にも書きましたが『この手の映画で、お金はどうとか、どうやって生活を成り立たせてるのかとか、そんなくだらない、下世話な心配なんかしたくない』んですがね。

TV版を観て「二度目だしTVだし、映画館ほどモヤモヤは無かった、けど、『かぐや姫の物語』や『まどか☆マギカ 叛逆の物語』を見返して口直ししたい」と思ったのも事実であり、それが自分にとってのこの映画の最終評価だなと再確認した次第です。
| comments(4) | trackbacks(0) | by LINTS
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コメント
深く考えない私は、口当たりの良さに丸め込まれてしまいそうです(^_^;)
りんつさんのように鋭い観察眼が欲しいです。
| ジュリ | 2012/12/09 11:35 PM |
ジュリさん>
やだなあ、単に好き勝手書いただけですようウフフ
| LINTS@管理人 | 2012/12/10 11:31 AM |
はじめまして。
『カーネーション』のころからこっそりと(つぶやき含め)拝見させていただいています。

『おおかみこども〜』は自分も楽しく観たのですが、後からじわじわと違和感がつのってきました。
ジェンダー関連には意識は行きませんでしたが、「リアル」と「ファンタジー」がうまくまじわらないということは自分も強く思いました。「嘘」のつきかたのバランスが悪いな、と。LINTSさんのドレッシングの例えは言い得て妙で膝を打ちました。
映像はそれはすばらしく、細部までリアル。(例えば本棚に並んでいる絵本はすべて実在のものです)
でも話はそれこそ生活費どうするの的な大穴がボコボコ。
物語なら、多少のアラは気にならないくらいに気持ちよくだまして欲しかった気がします。
個人的に(そして一緒に観た連れ合いも)観ていて感情が一番揺すぶられた場面はおおかみおとこの最期でした。早すぎますね。
ご友人の意見は自分にとってまったく新しい視点で興味深かったです。

初めてお邪魔して長々としたコメントで申し訳ありません。
失礼いたします。
| Me West | 2012/12/10 9:22 PM |
Me Westさん>
書き込みありがとうございます。
おおかみおとこの死別シーンは残酷なものでしたね。
だからこそ、花の孤独が映えたのだと思います。
それを考えると、やっぱりいろいろもったいない映画でしたね。

友人の意見は、たぶん特殊だと思います(笑)
感想サイトをあちこち見ましたが、
「狼視点」は無かったし(笑)
友人曰く、
「狼の生態を勉強した上で観るといいよ」
だそうです(笑)
| LINTS@管理人 | 2012/12/14 9:52 AM |
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