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で、結局どの『はやぶさ』映画を観たらいいのよ〜4本完走の感想

※いろいろ追記・修正しました

ということで、はやぶさ映画4本のまとめ+aでーす。

もともと四本観た後で、比較したのをまとめようとは思っていましたが。その想いをより強くしたのは、寺園淳也さんのツイートです。

実際にはやぶさ運営に関係していた方の、FOX版の評価が非常に高い。しかし映画評論家(を名乗るライター含む)の評価は今ひとつで、むしろ貶めているものがもてはやされている。

関係者だから贔屓目に見てるのだろうか? 題材にしてもらった手前、確かに簡単に批評できないだろうけど、しかし、FOX版への信頼度の高さが尋常ではない。

このギャップに、(そんなに数は観てないけど)映画好きで、(にわか丸出しでごめんなさい)はやぶさファンとして「んん???」となりまして。

「ああ、つまり映画評論家は映画を観る目はあっても、『はやぶさ』を理解して観てる訳じゃないんだよなあ」と、ひとつの結論に至りまして。

「確かに『はやぶさ』について何も知らない、まっさらな目で観ることは必要だけど。でも、『はやぶさ』をよく知ってる訳でもない人たちの評論『だけ』が正しいものとして拡散してるのは、正直どうだろう」と疑問に思いまして。デマ拡散の件も含めて、不信感を持ってたこともあり(笑)

「じゃあ、拙いけど自分で思ったこと感じたままを書いてみよう」とまとめることにしました。

まあ、そんなこと言いつつ、身も蓋もない話ですけど、「4本まとめて一本にしたら良かったんじゃね?」という意見には同意せざるを得ません(笑)

HBTTEの超絶美麗グラフィック、FOX版の完全コピー力、東映の静かな演技を見せる渡辺謙と山崎努、松竹版の専門用語の噛み砕き力。これらが合わさったら、もっと良い映画になっただろうと想像はつきます。

話題の素材にすぐ飛びつく企画力のなさだとか、感動を与えてくれた無垢なるものへ群がる姿勢から受ける『さもしさ』への嫌悪感も、人を遠ざける要因となってるのも確かです。

が。

逆に考えれば、同じ題材で複数の映画が作られるのは珍しいことですし、拵えの差を楽しむことも悪くないことではと考えます。ですので、批判はちょっと脇に置いて、改めて「映画として、それぞれどうだったのか」と言う点に絞って書きたいと思います。

以下、ネタバレになりますので、知りたくない方は引き返してくださいw また、私個人の感想になります。好意的解釈をしているので、その分差し引いて読んでいただけると嬉しいです。






という訳で、プラネタリウム、FOX版、東映版、松竹版の四本を観て来ましたが。「で、結局、どの『はやぶさ』映画を観たらいいの?」の返答としては

「プラネタリウムは確実に押さえろ」
「後は好きなのを選んでいいよ」
「完全コピーに偽りなし。現場の空気に最も近い映画ならFOX」
「落ち着いたドラマをみたいなら東映」
「親子で見たいなら松竹」

…に、なるかなあ。

なぜ「ストーリーで選んでもいい」と言うと、(製作時期がはやぶさ帰還前だったプラネタリウム版は除外して)FOX、東映、松竹とも後述の通り『はやぶさ』に関するエピソードのピックアップはどれもほぼ同じだからです。そして肝心の映画の仕上がりとしては、どれも『だいたい平均的なもの』に仕上がってるかと。世間でいろいろ言われてますが、言うほど酷くなかったから、というのが私の感想です(もっとも、東映版、松竹版に関してはもう少しストーリーを整理しても良かったかもな、というのもありますね)。

で。
最初に書きましたが、はやぶさ側のストーリーの基本パターンはどれもほぼ同じです。

『打ち上げ→スゥイングバイ→二年後イトカワへ到着→タッチダウン前でリアクションホイール3つのうち2個の故障が判明→ターゲットマーカー投下→一回目タッチダウン後不時着、デルタV→会議の後二回目タッチダウン→通信途絶→プロジェクト解散寸前、ポット運用、文科省への予算の交渉→臼田経由ではやぶさの信号キャッチ→帰還途中でイオンエンジン寿命で停止→クロス運転成功→地球帰還、カプセル分離→はやぶさ、ラストショット撮影→大気圏で燃え尽きる』

この流れで統一されています。あまりの似通いぶりに、JAXAから「こういう流れで造ってくれ」と指定があったのかと疑うぐらいです。いや実際はありませんが(笑)。

ちなみに、私の気に入りは『HBTTE>FOX>東映>松竹』。

東映と松竹はほぼ同列です。見た順番に評価が並んでますが、たまたまですね。…いや、FOX版で安心した、というのも大きいかもしれませんがw

以下、各映画の感想です。


■はやぶさ HAYABUSA BACK TO THE EARTH■
監督・シナリオ・絵コンテ/上坂浩光 劇場版は角川映画配給

角川公式サイト
ライブ公式サイト
もともとは全天周映像(プラネタリウム)作品を、劇場用として上映。映画館では終了しているが、現在も上映しているプラネタリウム多数。
・プラネタリウムの上映開始時期は2008年1月。つまり、はやぶさが通信途絶復帰の前後から作成されていたということ。はやぶさの帰還を願って作られたという意味では、他三作品とはコンセプトが異なる。
・上映開始当時は46分。その後はやぶさ帰還にあわせ新映像追加、53分の『帰還編』として上映される。劇場にかけられたのは『帰還編』バージョン。
・全編長美麗CG。一時間にも満たないが、迫力満点。
・篠田三郎の語りが実に心地いい
・音楽が非常に美しい。エンディングは反則w

・監督の上坂氏はウーメラに赴き、リエントリを見届けた唯一の監督
・上映時間が短いので、物足りないかもしれない。むしろ物足りない(笑)


はやぶさ−HAYABUSA−
監督/堤幸彦 20世紀FOX配給

・理学者の卵(竹内結子)と、JAXA広報室長(西田敏行)を主軸に据え、相模原の宇宙科学研究所(ISAS)を舞台に、打ち上げ前のはやぶさの開発から時系列順に淡々と追いかける群像劇。

・理学と広報の視点から、工学実証機はやぶさと、その運営状況を描いている
・ここへ主人公水沢を通して、科学者の現状を浮き彫りにする。
・『物事を続けるために、本当に必要なこととは何か』を、水沢の母親の言葉を借りて伝えている

・『完コピ』の謳い文句通り、当時の現場の雰囲気を一番うまく描き出している
・その精度は『はやぶさ』運営スタッフだった寺園淳也さんお墨付き(笑)
・虚構と現実のブレンドがうまく、セミドキュメントタッチになっている
・ユーモアを帯びた演出のためフィクションと思われがちだが、そのほとんどは本当にあったエピソードが元になっている。でも本当の斉藤先生はものさしは使わないよw
・主人公は、JAXAの広報や女性研究員さんを統合して造られたもの
・はやぶさの『語り』は、JAXAの研究員さんが実際に作成した『はやぶさ君の冒険日誌』を元にしている
・開発者を取り巻く一般の人々の目線が温かい。同時に世界最先端の研究をする人々も、一般の人となんら変わらないという、当たり前の『地続き感』を映し出している
・エンドロールは必見!
・DVDの特典とオーディオコメンタリーは必見! 力入れすぎです本編を凌駕してますマジで

・主人公の人物設定やオタクの描写で一部のその筋の人の反感を買ってしまった
・演出を理解出来ない映画評論家に、「アニメ声で喋る」とデマを流布された
・激論や対立の演出が少ないため『軽い』と受け取られがち


はやぶさ 遥かなる帰還
監督/瀧本智行 原作/山根一眞『探査機はやぶさの大冒険』 東映配給

・いわゆる渡辺謙バージョンの『はやぶさ』
・川口PM(渡辺謙)を主軸に据えている。ただし、どちらかと言えば抑え役に徹している
・イオンエンジン開発者(江口洋介)と、メーカー担当者(吉岡秀隆)がストーリーを進める車輪役。ここに零細町工場の社長と新聞記者の娘がサブストーリーとして絡む
・抑えた演出で、落ち着いてじっくり見せるエンターテイメント映画
・企業と学問のジレンマが垣間見える
・日本は技術立国と言いながら、最先端技術を支える零細企業の厳しい現実を炙り出している
・公式サイトの、協力企業紹介は必見。
・プロジェクトXが好きとか、ドキュメント風味が好きな人向けかもしれない
・新聞記者の立場を通して、新聞の科学部がどういうスタンスで取材をしていたかが垣間見える
・紙媒体メディアは積極的に『はやぶさ』を取材し取り上げていたのは事実

・江口洋介と吉岡秀隆の喧嘩は科学者というより企業の会議演出っぽい
・一見ドキュメントっぽい作りだが、創作部分が多い。
・國中均さんとその後輩でNEC勤務の堀内康男さんをモデルとし、その関係はオリジナルシナリオで構築している
・0から1を生み出すクラフトマン思考と違い、1から2の利益を生む思考を必要とするビジネスマンが見るには、こういう描写の方がピンとくるのかもしれない

・わずかなシーンではあるが、『優秀な科学者は、叩き上げの交渉人でもある』を体現している
・これは『イトカワ微粒子の解析権利と引き換えに、NASAと協力関係を結んだ』という事実を元に構成されている
・どんなにオリジナリティ溢れるアイデアを思いついても、予算が潤沢なNASAにアイデアを具現化され、先を越される現実を何度も目の当たりにしたことから、「独創的なアイデアを守るには、強大な相手をライバルとするのではなく、協力関係を結んで引き込んだ方が良い」という考え方が生まれた。そのことを掬い上げている
・エンドロールは必見!
・観終わったら、かりんとうが食べたくなる(真顔


おかえり、はやぶさ
監督/本木克英 松竹配給

・いわゆる藤原竜也バージョンの『はやぶさ』
・『のぞみ』のプロジェクトマネージャーの父と、『はやぶさ』イオンエンジン担当する息子が軸となる。
・ここに、JAXA研究員の家族を絡め、母親の入院経過とはやぶさの帰還を重ね合わせて表現している

・「成功の意味」と「継承」というテーマを深く追求し、物語として描き出している。
・『のぞみ』失敗からの立ち直りが『はやぶさ』に重なり、父と子の和解と『失敗から学び、前進する』ことの重さを説いている。

・どちらかといえば、『はやぶさ』はサイドストーリー的な構成
・専門用語を分かりやすく解説する姿勢は好感が持てる
・ちなみに、『はやぶさに子供が乗る』演出は、スゥイングバイの説明で使用。これはこれであり
・現場の再現と言う意味では、一番ツメが甘い。
・3Dということもあり、CGは美麗。ただし、イトカワとはやぶさの縮尺が変(笑)
・子供が参加しているセミナーは、実際に行われているものを元にしている
・エンドロールは必見!
・言われているほど酷い拵えでは無いが、『はやぶさ』をメインとしているか、と言えば少々弱い。視点を大きく広げて、「過去から未来へ繋ぐ大きな流れの一部を切り取っている」と言う思考が必要かも
・ツッコミどころは満載なのは事実(笑)


だいたいこんな感じですね。気が向いたり思い出したら、追加したり削ったりするかも。

以下は、覚え書きついでみたいなもんです。





↓↓↓
■映画を観る時、これを抑えておくと背景が分かりやすいかもしれない
・はやぶさとは、工学実証機である
・『工学実証』とは、将来の本格的な探査に必須と考えられる技術が、実際に使用できるものなのかを検証するための研究。つまり『本番前の準備』である(はやぶさ2が必要と言われるのはこのため)。

・『はやぶさ』で指す工学は、イオンエンジン、帰還カプセルの開発と運営等を指す(ざっくり)
・『はやぶさ』で指す理学は、イトカワ観測、イトカワ微粒子の研究方面を指す(ざっくり)
・ちなみに『金星探査機あかつき』は科学衛星であり、金星観測のデータを送って始めて成功と言える。現在、金星軌道に乗るために奮闘している。
・IKAROSは工学実証機であり、ソーラーセイルとして今後の開発に必要なデータを取るために制作された人工衛星である

・相模原にある宇宙科学研究所(ISAS)の前進は、東大の糸川博士の研究室である
・トップダウンではなく、ボトムアップが尊重される傾向がある
・良いアイデアは立場の壁を越えて採用される風潮がある。はやぶさ生還が実現したのは、これが大きな役割を果たしている。
・とにかく貧乏である。泣けるほど貧乏である。内之浦の施設をNASAに『ボロを着たマリリン・モンロー』と称されるぐらい貧乏である。
・貧乏であるが故に、「専門分野以外のことは知らない」ことは必然的に許されず、誰もが別分野をカバーできる状況にあった。
・その結果『はやぶさ』の構造を理解できるようになり、はやぶさ帰還に大いに反映された


■感想サイトとまとめサイトは別物
感想サイトを選択の参考にする場合、映画ファンのレビューブログはそのまま受け止めていいと思います。忌憚の無い感想をバシバシ聞くのは面白いものです。

ただ、タイトルに『大コケ』『爆死』等のフレーズを使用しているものは、まとめサイトであり感想サイトではありませんので、除外すべきかと。

ここで述べるまとめサイトとは、いわゆる2chのスレッドから記事になりそうなものを抜き出し、よりセンセーショナルな見出しをつけ、いかにも『公式に発信されたニュースサイトです』な振る舞いを見せるブログのことです。

この手合いのブログは映画の中身は二の次、とりあえず話題に乗っかりたいという人々の発言が主なので、正直なところ、あまり参考にはなりません。また、ブログの管理人がコメントを意図的に選び、面白おかしくけなすものばかり抽出するものもあるので注意が必要です。

ぐぐるとこの手のタイトルがわーっと表示されますが、たいていまとめサイトです。映画の感想を読みたい場合は避けたほうが無難です。

ただ、同じ2chのまとめサイトでも映画板のものもあり、そちらは冷静な映画評を読むことができます。同じまとめサイトを読むのであれば、映画板のものを探して参考にしたほうが良いと思われます。


■映画批評家やライターについて
出版社の名前を背負い、あるいは自分の『目』を売りにして、映画を批評して飯を食っている『映画批評家』ですが。最初に書きましたが、彼らは「映画を観る専門家であるが、必ずしも『はやぶさ』を良く知っている訳ではない」人たちの視点だ、というのを踏まえて読んだほうが良いです。

彼らの言動は率直であり、その印象は素直で「確かに、はやぶさを知らない人から見れば、そういう考え方もありだね」と言えるものもあります。同時に、発信者である彼らの意見が、そのまま映画の動員人数に影響することも多々あります。なんとなく映画を観たいけど、何観ていいか分からない、なら、この本の映画評を参考にして――なら、それはそれでいいかもしれません。

ただ、『はやぶさ』映画批評に絞っているここでは、彼らの言うことを本当に参考にしていいかどうか、図りかねる場合が多いのも確か。

興行収入が入らなかった、と言う点で書きたてられているようですが、「ん?むしろ健闘してるんじゃね?」ですね。少なくとも最初の週は三本ともベストテンに入った訳ですし。FOX版はロングランしてましたしね。本当に『大コケ』したのなら、最初の週から圏外のはずだし、早々に打ち切られてると思うんだけど。

あと、はやぶさを三本も作ったことを揶揄したり馬鹿にする映画評論家が目立ち、「そこから一歩踏み込んで」評論できる人が居ないのもがっかりでした。ネタにすることは誰でもできるんですよ。某前田有一氏のように映画を読み違えてデマを拡散したことをはじめ、一部の人たちは批評とも呼べない酷いものでした。

まあ、ネットや雑誌に掲載されてる評論を読むとき、(『はやぶさ』を理解してるかどうかを問うのは難しいのでその点は百歩引いて)「映画そのものを、ちゃんと理解しているか」を判断する一部としては

1.三本あるいは四本ちゃんと観ているか、それを映画評として書き起こしているか
2.FOX版『はやぶさ−HAYABUSA−』の主人公を『オタク』と評しているか、いないか
3.『三部作』ではなく『三作品』と称しているか
4.『HBTTE』の評価があれば言う事なし


一番目は言わずもがな。

二番目。竹内結子演じる主人公は、映画内で「北大(北海道大学)を出て、論文に取り組みつつJAXAの研究員を務めている理学博士の卵」との設定が読み取れるように構成されています。しかし『オタク』の一言で終わらせている場合、『身なりや素振り、口調』と言う『上っ面』だけで判断している、つまり『その批評家は、どこかでタカを括ってきちんと観ていない』か、あるいは『見た目のインパクトに簡単に騙されやすく、物事を深く考えて読み取る力が足りない』ことが分かります。

もちろん、『オタク』と評しながらきちんと読み解いている方もいるでしょう(注:『読み解く』とは、褒めるばかりでなく、筋道立てて何が足りないのかの指摘も含みます)。
ただ、素人の感想ならともかく、映画を観る目で生業としているとあれば、この程度の文脈も読み取れないことの現れであり、発信される情報の質に疑問を持たざるを得ません。

三番目。はやぶさは『三部作』ではないという事実を理解しているかどうか。『ロード・オブ・ザ・リング』とか『マトリックス』を連想しがちですが、三本とも独立した映画で、それぞれ特色が全く違う、と言う点を理解しているかどうかですね。
細かいことですけど、これ大切。はやぶさ三部作なんて、この世に存在しません。自分の感性を述べる以前に、『映画の基本情報を正しく発信する』ことが出来なければ、ライターとしてどうかと思いますしね。

四番目。言わずもがな!


■では、三本映画のどれが、真実を描いているか

「どれも真実ではありません」(即答)

確かに、どの映画も事実をベースに多くの関係者に取材をしており、『はやぶさ』と言う現象を真摯に描いていますが、これらのドラマをそのまま鵜呑みにしてはならない、と言う点は留意。

そんなん、たった二時間ちょっとで全てのエピソードが拾えるわけ無いじゃないですかヽ(´ー`)ノ

たとえば、『ミネルバ』のこと。映画で始めてはやぶさを知った方には、何を意味するのかさっぱりですよね。

あるいは、サンプラーホーンで『WTC』サインが発信されたにも関わらず、弾丸が発射されてなかった後のフォロー。「一回目の不時着の際、舞い上がった塵がカプセルに入っているかもしれない」と言う可能性を具体的に示したこととか。

地球に帰還する際のTCM(精密誘導を行い、軌道を修正する)は、薄氷を踏むような危機の連続だったこと

何よりも(自分的に)重要なのは、『はやぶさは本来、地球に帰還しカプセルを分離した後は、別のミッションに就く予定だった』と言う話が一言も出なかった点。打ち上げた瞬間から、はやぶさは特攻することが決まっていたかのようですが、本当は違います(笑)。リエントリーは、止むに止まれずの選択だったのです(謙さんバージョンで触れてくれると期待したんだけどなあ)。

そのほかにも、映画ではこう描写したけど、本当は…というエピソードはたくさんあります。「オリジナルストーリーはいらない、その分もっと現実のエピソードを拾ってほしい」と言う意見ももっともですし、私もそう思います

そういう意味では、「映画はいらん、ドキュメンタリーで十分」と言う意見は正しいものではありますが。

ただ、映画のストーリーは「『はやぶさ』を知らない人のための誘導路」であり、「『はやぶさ』とそれに関わる人々と環境の象徴である」点を踏まえれば、さして悪いものではありません。FOX版では科学者の、東宝版では技術者とメーカーの、松竹版では『継承』を託して描かれている訳であり無駄ではないと思います(出来がどうかとか、自分の好みにあうかどうかは別の話ですけどね)。

あと、「ドキュメンタリー番組を盲信しない」ことも大切かと。関係者の話をふんだんに交え、取材クルーが現場に入り込んで『事実』を追う姿勢と、演出をぐっと抑えている分、より真実味を増して受け取りやすいものですが。

『時間の制約がある』と言う意味では、実は映画とさほど変わりません。また、ドキュメンタリもまた『演出』が存在し、エピソードの取捨選択が行われた上で、観る者を心地よくさせる『流れ(ストーリー)』が存在する、と言う視点は意識しておく方がよいかもしれません。むしろオリジナルストーリーと言う『異物』が無い分、「これが真実だ!」と思い込んでしまう危険性は映画より高いかもしれませんね。
(よく引き合いに出される『プロジェクトX』ですか、これも演出に沿って『ストーリー』が決められており、そのため一部の関係者が一方的に悪者にされたり、演出を優先させた結果事実と違うことが伝えられ関係者を激怒させたり等、問題があった点は踏まえるべきでしょう。つきる所「『プロジェクトX』風味の演出の映画が観たい」という希望に集約されるのでしょうね)


結局、映画もドキュメントもニコ動も『入り口』『きっかけ』。真実を知りたければ、本を読んだり講演会に行ったり、より詳しい人の話に耳を傾けたりして、「『はやぶさ』とは何なのか。その時何があって、当事者はどういうことを考え、思ったか。そして何を目指し、どこへ行こうとするのか」をより深く知り、考えることが大切であり、そこへ観る人を導くことが映画やドキュメントと言う映像媒体の真の役割だと思うのです。

連続映画化は、『はやぶさ』バブルの象徴かもしれません。でも、一本+三本できたことは、決して無駄じゃ無かったと思いたい。知らなかった人が興味を持ち、一人でも宇宙をより深く知りたいと思うきっかけになれば、それで成功といえるのかもしれません。

以下は関連書籍、DVDです。たくさんあるので、その一部をご紹介。

■小惑星探査機 はやぶさの大冒険

↑『はやぶさ はるかなる帰還』原作本。はやぶさ関連で一番最初に出版されたノンフィクション。時系列順に、丁寧に書き記されています


■はやぶさ君の冒険日誌

↑『はやぶさ-HAYABUSA-』で、水沢恵が描いていたはやぶさイラストの原作。JAXAの職員さんが運営中実際に描き続けたものをまとめたもの。


■探査機はやぶさ7年の全軌跡―世界初の快挙を成し遂げた研究者たちのドラマ

↑科学雑誌ニュートンのムック本。鉄板中の鉄板!


■探査機はやぶささん

↑はやぶさの軌跡を擬人化して紹介。敬遠するのはもったいない。解説の分かりやすさは随一。


■恐るべき旅路 新版―火星探査機「のぞみ」のたどった12年

↑火星探査機『のぞみ』運営の苦闘を描いたノンフィクション。古くからISASを応援する人々の間で「『のぞみ』知らずして『はやぶさ』語るべからず」と言われるが、なぜそう呼ばれるかが理解できる一冊。一時絶版でしたが、復刻されました。


■「コズミック フロント」大冒険!はやぶさ 太陽系の起源を見た

■小惑星探査機“はやぶさ”の軌跡

↑ドキュメント番組二本。上は『コズミックフロント』、下は『追跡!AtoZ』を収録したDVD。さすがHNKと言わざるを得ません。
| comments(2) | trackbacks(0) | by LINTS
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コメント
「はやぶさ2」が打ち上がったタイミングで、そういえば「はやぶさ」って映画があったなーと思い、西田敏行版というかFOX版をレンタルして見終えました。それでネット検索したら、こちらのブログへたどり着きました。いろいろとお詳しそうですね。勉強になりました。なるべく平等な立場で書かれたブログの内容も、勉強になるなぁと思いました。ありがとうございました。
| 御城葡萄 | 2014/12/20 8:31 PM |
御城葡萄さん>
すっかりお返事が遅れてしまいました、申し訳ありません。
FOX版「はやぶさ」、楽しんでいただけたようで何よりです。
私の知識もしょせんつけ刃でしかありませんが、
少しでも「はやぶさ」映画を楽しめるきっかけになれれば何よりです。
| LINTS@管理人 | 2015/05/08 2:02 PM |
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