■三日目 昼 『開けた四つ辻』へ移動
・ダイヤ4⇒印象的スポットを発見
・スポット遭遇表で「像」+【言葉決め/一語のみ】で「醜怪」⇒[醜怪な像]
・どんな像かを【言葉決め/二語連結】⇒[亜熱帯の大トカゲ]
・ダイヤ9⇒追加イベント無し
【語り】
♪天の水車は ゆうるり回る
オザンの足元 ゆうるり回る
地上のわるさを見逃さぬよう
イーヴォはめだまを ぐるうりぐるり
朝飯をすませた俺は、その足で丘を下りる。
とりあえず集落へ向かうことにした。
ガキの頃、よく近所のダチと歌ってた『鬼決め歌』を口ずさんだのは、昨日のあの水車の風景があったからだろう。
この陽気だ、濡れた服は歩いてりゃ乾く。
「にしても、腹立つなあ…」
そりゃまあ、流れ者やってりゃあ理不尽な扱いも当然受けることも、一度や二度じゃねえ。
野良犬みたく追い払われたり、胡乱な目で見られたりは日常茶飯事だ。
しかし、いきなり水ぶっ掛けられたのは初めてだった。
流れ者だからって、怒らず我慢する筋合いは全く無いはずだ。
ブツブツ言いながら道を行くと――
「なんだありゃあ?」
道の端に、奇妙なものをみつけた。
石像。まだそれほど古くなさげだ。
しかし、それは一言で言えば、[醜怪な像]としか言えないもの。
どうみても、[亜熱帯の大トカゲ]だ。
台座に掘られた文字を読むと、それなりに名のある彫刻家の作品らしい。
しかし、のどかな田園風景の中で浮きまくっている。
「趣味わりい…」
誰が、何の目的で造ったんだか。
こんなもんを飾られた村人は、さぞ迷惑だろうが。
つーか、そもそも誰も文句言えないんか?
しばらく観察してたが、それにも飽きて俺は像から離れた。
【語り終わり】
■三日目 夕 『開けた四つ辻』を散策/逍遥
・スペード1⇒攻撃的/危険な[反発的存在]と遭遇
・遭遇表で「商人」+【言葉決め/一語のみ】で「小麦色」=[小麦色の商人]
・存在ロール表⇒スペード1⇒嘘をついてミスリード/誤解をさせようとする
・詳しくは[汎用存在シート]を参考に。
【語り】
俺がこの四つ辻に着いた頃、村人は夕餉の支度で忙しくしていた。
家々の屋根からつき出た煙突から、煙が立ち上っている。
煙は赤く染まりつつある空の中へ、うっすら消えていく。
この景色は、俺の心のあるところを揺さぶらずにはいられない。
あの夕陽を追っていけば、あの家に還れるのかもしれない。
荒くれどもや流れ者が、かりそめの我が家とした、あの暖かな風景。
酔っ払いどもの、がなるような歌声。
今にも割れそうな勢いで、何度も重ねられた乾杯の音。
むさくるしい男どもの合間に見え隠れする、
母ちゃんの給仕姿、兄ちゃんの笑い顔。
去っていったもの、消えてしまったもの。
俺の帰るべき場所は、とっくの昔に無くしちまったのになあ――
ここはそれなりに大きな村らしい。
辻の真ん中は大きな広場になっていて、人々や馬車が賑やかに行きかってる。
店や鍛冶屋も出揃い、宿も何軒かある。
今日は久しぶりにベッドで眠りたいものだ。
といっても、せいぜい木賃宿になるが――。
しかし、なんつか…
「視線が痛いってんだ」
思わず呟いた。
村人が俺に寄越すそれは、あからさまに、不振人物を見る目。
ヒソヒソ、ボソボソ。
何喋ってるかも、だいたい予想がつく。
改めて見回す――旅人らしい人間は俺だけだ。
普通、この規模の村じゃあ、それなりに外部の人間の姿もあっていいもんなんだが。
「こりゃあ、宿は難しそうだなあ…」
頭を掻きながらため息をついた、と。
視界の端に、ちらっと写るお仕着せ姿。
そいつをみつけた瞬間、俺は駆け出した。
「この野郎!」
その背に追いつき、強引に振り向かせた。
一瞬驚いた表情を見せたそいつ――俺に水をぶっかけたラムザス人の娘。水桶はさすがに持ってないが、しかし、忘れようたって忘れられるもんじゃねえ。
「今朝はよくもやってくれたな!」
吠え付く勢いで怒鳴る俺に、娘はすぐ無表情となる。
「何か言えよ!」
そのツンケンした態度にますます腹が立ち、怒りの納めようがない。
「どうかしましたか?」
不意に声をかけられ、見やると一人の男。
娘とは違う色の(でも、この辺りでは珍しい)濃い肌色、いかにも裕福そうな彼はひどく驚いている。
「アミール、説明しなさい」
アミールと呼ばれた娘は、軽く頭を下げる。
短く切った黒髪に乗る白いヘッドセットが、一瞬俺の視界から消え、元の位置に戻った。
その隙に、俺は言葉を滑り込ませた。
「どうもこうも、今朝、この娘に水をぶっかけられましてね」
怒気を含んだ視線そのまま、俺は男を睨み付ける。
「あんたが彼女の雇い主かい?」
じろじろと無遠慮に見る俺の目に映るのは、男が身につけたたくさんの琥珀の装飾品。
「俺は確かに無頼モンの流れモンだがな、いきなり水ぶっかけられて黙ってる筋合いはねえ。下のモンの教育は、きちっとやってくれよな、オッサン!」
俺の怒気に押されたのか、男は大仰に驚いてみせ
「何ということを! アミール、謝りなさい」
召使の娘を叱り飛ばした。アミールと呼ばれたラムザス人は、しぶしぶという様相を隠しもせず
「ごめんなさい」
口先だけとあからさまに分かる態度で、俺に向かって頭を下げた。
その瞬間、娘が地面に突っ伏した。
「この恩知らずが! 私の顔にまた泥を塗るようなことをして!」
男は手にしたステッキで、娘を殴りつけたのだ。突然のことに、俺はあっけにとられ、
「や、ちょっと待ってください、そこまですることは――」
慌てて止めに入った。
「いいえ、使用人の躾は私の役目です。
態度のなってない使用人を厳しく罰することは当然のこと」
激昂する男は、ステッキを振り上げたまま下ろさない。
「だからと言って、暴力はいかんでしょう」
「アミールの性根曲がりは今に始まったことではありません、
すぐに言わなければ分からないのです」
「でも、訳ぐらい聞いてからでも」
「言い訳なぞ許しません。そもそも、あなたに行った事は、言い訳できぬことですよ?」
「しかし、ちょっとやりすぎですよ。ここは収めてもらえませんかね?」
俺の言葉に、男はわずかに逡巡した。
そして、ふうっと息をつき、琥珀で飾られたステッキをおろす。
「分かりました。ここはあなたに免じて収めましょう。しかし、私の気が収まりません」
漢はしばし逡巡し、何かを思いついたようにはっと顔を上げた。
「そうだ、我が家で一晩泊まっていただけませんか?」
「へ?」
「見るとあなたは旅人のよう。今夜の宿はまだお決まりではないのでしょう?」
「はあ…」
俺の生返事に、男はやっと笑顔を見せた。
「ならば話は早い。お詫びの印に、我が家にお泊りください」
「いや、お断りしますよ、それではまるで宿をせびったようじゃないですか」
俺は慌てて断りを入れた。
冗談じゃねえ、たかりゆすりと思われちゃあ迷惑だ。
「そんなことは思っておりません。我々の非礼をきちんと詫びたいと思ってのこと。そうですね、アミールにあなたの世話をさせましょう。それならあなたも気が済むのでは?」
「え。えええええ…と…」
俺は思わずラムザス人を見た。
アミールはすでに立ち上がり、
「ご主人様の仰せのままに」
うつむいたまま、短く答える。
その頬に、ぶたれた跡が赤く残るのを見て、俺の心の中で何かが動いたようだった。
「…分かったよ。じゃあ、世話にならあ」
男は、心底ほっとしたようだった。
「では、屋敷に案内しましょう」
「や、やしき??」
「ご主人様は、琥珀商でございます」
アミールの言葉に、男はチッと舌打ちをしたが、すぐ満面の笑みを浮かべ
「琥珀はほんの片手間ですよ。いろいろ手広くやらせてもらってます」
そう付け加え、
「私のことはゴードンと呼んでください」
[小麦色の商人]は、そう名乗った。
【語り終わり】
[小麦色の商人]ゴードン登場。
反発的存在だけど、ロールが『嘘をついてミスリード/誤解させる』というものなので、あえて友好的な態度を取らせてみました。
アミールと琥珀もうまい具合に活かせたかな?