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『聖戦記エルナサーガ』全13巻


絶版マンガや、単行本化されなかったマンガを作者許諾で無料公開するサイト『マンガ図書館Z(旧Jコミ)』。時々利用しています。

堤抄子作『聖戦記エルナサーガ』。連載中は知らなかったのですが、最近のTLで触れられ興味を持ち「とりあえず一巻から読んでみようか」が運のつき。

休日の半分を使い13巻全部読み終わった時の感嘆。分厚く内容の濃い小説を読み終わったのと同等の読後感。どっしりした気持ちと共に、物語を一気に駆け抜けた充足感は久しぶり。


一言で言えば『いかなる現実からも目を背けない気高さに満ち溢れた物語』でした。


舞台は世界を脅かす魔風から守られた大地『世界(ギムレー)』にある三大国アーサトゥアル・アンザス・グードランド。そのひとつアーサトゥアルの姫にして、全世界の中ただ一人全く魔力を持たず生まれた為“闇の姫御子”と喩えられるエルナが主人公。

魔力を持たぬ故、逆に人々の体内の魔力に反応しその身体を破壊する封魔呪を帯びることは可能。長らく戦に負け続けたアーサトゥアルは、『世界』を魔風から守る絶対封魔剣を抜くと他国に知らしめることで戦争の優位に立とうとするが、それを知ったアンザスの第九王子シャールヴィが単身暗殺に乗り込み…

というスタート。

以下ネタバレ感想です




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主人公エルナは何の力も持たない。
敵を打ち倒す魔法も無い。
目の前の『死』を看過できず、涙を流し心を痛める。そんな彼女が背負う世界は、計り知れないほど重く常人では耐え切れないだろう。

『現実』の前に膝を屈するのは容易い。『力』に頼り、『敵』を打ち倒すのは心地よい。しかし、なんの力を持たないエルナは否定する。

彼女は常に考える。

「自分に何ができるのか」
「どうすればよいのか」

そしてはっきり宣言する。

「それは、間違っている」と。

力もないくせに青臭い理想だけで突っ走る愚かな彼女の姿は、もっと若いころに読めばイライラしたかもしれない。しかし彼女は、たったひとつの大切な思いを手放さずに来たのだ。

エルナの選択がはかなくも力強く受け止められるのは、血なまぐさい戦場シーン、簡単に人が死ぬ様、裏切り、憎悪が真正面から描かれているからというのもある。

アーサトゥアル、アンザス、グードランドを含めた国の思惑とそれに翻弄される人々の姿が実に写実的。そこに「ファンタジーだから」と、都合の良い逃げ口上はない。
「ファンタジーだから」こそ、人が『人』たらしめる所以を描かなければばらないことを、この作者はちゃんと理解し、しかも高いレベルで昇華・表現しているから、『聖戦記エルナサーガ』は骨太の物語として伝わるのだろう。

物語の骨の太さは、魔法や戦いの表現にも現れている。
特に華やかさの象徴でもある、戦場で行使される魔法だが、この作品ではどちらかと言うと土と埃の匂いをまとう。剣や斧と同じ『武器』のように使いこなされている印象がある。

恐らく、魔法が絶対無敵の神具ではなく、あくまで人間が自らの目的のために使用する道具の延長として描かれているからだろう。魔法を使うタイミングや戦略、その一こま一こまの積み重ねで戦局が左右される。魔法を使ったから全て解決ではないこと。

『全ての人々が、大なり小なり魔法が使える世界』だからこそ、地に足の着いた使い方を見せ、物語の一翼を担っているのだろう。


魔力を一切持たない存在として『生み出された』エルナ。
神の加護なき闇の姫御子は、病やちょっとした怪我で命を落とす。
そんな彼女のたゆまぬ歩みに感化され、

旧態依然とした現体制に疑問を持ち動き始める人々。
彼女の過去を知り、彼女の力となるべく動き出す人々。
難しいことはよく分からないけど、彼女が信じるに値する人間だと、最初から分かってた子供達。

敵味方の枠を超え、彼女に賛同する人々の助けを受け、
彼らの思いを受け止めながら決して歩みを止めなかったエルナ。

「わたしにできることはなんだろう」
「どうすれば、人々を幸せにできるのだろう」

そして彼女は悟る。
悩みとは力。悩むことこそが力。
悩むことで考え、考えることで恩讐を乗り越え、
初めて自らの道を選び取ることができるのだと。

力強く何度も繰り返される問いの果てに掴み得た彼女の『答え』。
それこそが苦難の道を選び続けたエルナにこそふさわしい。


マンガ図書館Z』は、マンガ掲載中に出てくる広告が100%作者に入る仕組みです。
また『聖戦記エルナサーガ』は各巻300円(税抜)、全13巻3.900円(税抜)でPDFダウンロードも可能。作者印税40%で、サイトサービス終了後も所有可能です。

懐かしい人には懐かしいし、今読んでも新しい物語です!




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