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『 #マッサン 』二ヶ月目のメモ書き
ぐずぐずするな、さっさと進めろ、尺稼ぎか。

などと言う視聴者の騒ぎを他所に、マイペースで進行する『マッサン』。
10月に住吉酒造を退職後、一ヶ月間の無職期を経てようやく鴨居商店に就職が決まり、話が進んだように見える。

私は個人的に、10月と11月、特に11月の無職期を『魂の地固め』と呼んでいる。

この無職期の間は、『日本でウィスキーを語る』上で必要な

『日本のよさとは何か』
『日本の特徴とは何か』

を、腰をすえてレクチャーしていた。この、日本人ですら即答に惑う問いの答えを、主人公である政春とエリーが『学ぶ』と言う形で提示している。

エリーは定番のご飯の炊き方から始まり、味噌汁の味、それにも味噌の使い方出汁の採り方で地方の個性があること。『友達』ではなかなか教える機会のない畳のヘリを踏んではならない理由や雑巾がけの方法は、『家族に近い親戚』が手ほどきする。その目は家屋の造りにも移り、細長い日本の風土に合わせて拵えられているのだと諭す。

政春も正春で、ウィスキー一辺倒だった性根を叩きなおすかのようにダメだしの連続だった。実家での日本酒の仕込みは、政春の目を通して観る側にも「日本の長所」を念押しした。挫折し腐り、仕事を選り好みし、文句ばかりだった彼も、最後は挫折したなりに現実を受け入れ、「食べていくために働きながら金を稼ごう」と前向きになる。もっとも、鴨居の社長のプロポーズ(!)で、念願のウィスキー造りの道に戻れたものの、やっぱり前途は多難のようだ。

(余談だが、政春の母親役が泉ピン子のため、そのイメージだけでイビリだ」と見る向きもあるが、彼女が行っているのは日本で生きるために必要な躾であり、知らなければ恥をかくのはエリーという想像力の足りない指摘だと思う。早苗は性格の良い女性ではないが、愛情深い母親だ。息子の連れてきた異国の嫁を認めているが、表に出さないだけなのだ。その、複雑な心境を、泉ピン子さんは魅力的に演じている。もし、週刊誌の記事で嫁姑だのイビリだのと書く記者は、「お前何にも見てないだろ!」と揶揄して良い。私が許すw)

エリーや政春が学ぶ日本の良さは、そのまま『日本でのウィスキー造り』の理念に反映される。

なぜ、日本で造らねばならないのか。
日本には、すでに日本酒や焼酎がある。
そもそも、生活にすぐ必要なものでもないのに。
輸入で事足りる、いわゆる嗜好の分野のものなのに。
わざわざ舶来モノの酒を造る必要はないのではないか。

その問いへ「日本で造るからこそ、意味があるのだ」と答えるための、準備期間だったのだ。
しかしそこへ至る道はひとつではない。

鴨居は「日本人に受け入れられる味である」と答え、政春は「本場スコットランドの風味をそのまま映したものだ」と答える。どちらも正しいが故に、この二つの価値観を揺れながら進む。視点がブレる為紡ぎだされる物語は、複雑で奥深い。

『プロジェクトX』の構成のような

  ウィスキー造りを目指しました! 
  誰にも理解されませんでした!
  開発にすごく苦労しました!
  やっと出来上がったけど、売り出しに苦労しました!
  でも、みんなが認めてくれました!

そんな、カタチだけの製造過程を追うだけでは、ダメなのだ。
(もひとつ余談を付け加えるなら、FOX版『HAYABUSA』の件もあって「プロジェクトXっぽくないから面白くない」と言う意見には「ならそっちを見とれ。わしはドラマ楽しんでるんだよこっちくんな」としか言えねえw )


『理念』とは、天上からキラキラと降りてくるものではない。
挫折し、真っ暗なトンネルの中、先も見えず、打ちひしがれ、誰も見向きもしない、だるくて、しんどくて、めんどくさい、「もうお前死んでしまえよ」と言われるような、本人にとっても周囲にとってもつらく苦しい時にこそ練り込まれるのだ。

その『理念』のあり方を呈示した二ヶ月間だったのだ。


※※


羽原大介という脚本家は、とてもドライだ。人情喜劇と言うには、湿り気(ウェット感)が足りない。『しっとり感』が足りない故の物足りなさ感は否定しない。

ただ、人間を観察する目は非常にシビアで、それは脚本、特に喜劇を称する本を書き上げるには必要不可欠な要素だ。『喜劇』は、ただ、ワーワーキャーキャー騒いで笑わせるものではない。徹底的な人間観察眼と、冷酷な『引き算』や『切り捨て』が出来なければ、書けるものではない。

そして『テーマ』に対して、非常にストイックだ。12月半ばに入り、未だに「ウィスキー造りを、自分の造るウィスキーを受け入れてくれる日本を夢見る男と、彼に惚れ込みスコットランドから来た異国の花嫁の人情喜劇」から一歩も外れることはない。少しは政春のウィスキー醸造技術を見せびらかしたりして、見る者の「マッサンやるやん」をほだすこともできただろうが、全くそんなそぶりはない。本当に、色気も素っ気もない展開。ドS極まりないと言えばそうではあるけど。

脚本や演出が拘るのは、あくまで『今、その瞬間に生き続ける政春とエリー』であり、『昭和・平成の偉人』ではないのが読み取れる。政春もエリーも、自分の人生の先を知らない。今を精一杯生きている。役者さんの演技もあいまって、だからとても愛おしくもみずみずしく見えるのだろう。

自分はこれで良いと思っている。
正直、これが「エリート技術者の挫折と成功、それを支えた妻」の物語なら、途中で飽きて投げていたかもしれない。たとえ夫婦のドタバタをはじめ、何を書いても、どう描いても、羽原大介の目線は、絶対に『ウィスキー』そして『ウィスキーを受け入れるとは』から逸れない。それだけで充分に楽しみに値すると考えているからだ。


史実を紐解くまでもなく、この後日本は過酷な時代を迎える。
日本を愛するエリーへ、日本人は手ひどい仕打ちをし続けるだろう。
「それでも、日本と日本人が好きだ」と言うだろう彼女の礎は、『魂の地固め』でなされているのだろう。

そして彼女自身が日本を愛する理由こそ、ウィスキーを日本で造らねばならない理由であり、政春は自分の理想とするウィスキーを目指して、今日も挫折するのだ。

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