不老不死の種族“オキナガ”が存在する日本。主人公はオキナガの少年(実年齢88)雪村魁と、そのオキナガを管轄する厚生労働省『夜間衛生管理課(通称やえいかん)』の新人役人伏木あかり。
−−−2015年。
若い女性が殺され、内臓の一部が抜き去られた。その手口は“羊殺し”そのままだが、魁は疑問を持つ。確かに『今年』は羊年。しかし“羊殺し”は年末に現れるが、まだ9月。自分の推理が間違っているのか、それとも…。
ゆうきまさみは熟練のストーリーテラーであり、『白クロ』は一流のミステリーであると確信した6巻。これまでもそうだけど、適切に散りばめられた伏線を適切なタイミングで回収。その『伏線』も、読み返して「これか!」と思うほどたわいない世間話やバカ話の中に、自然に混ぜられている。しかも、目の前の事件は解決したのに、“羊殺し”の謎は深まるばかり。
陰惨な殺人事件、人間の暗部を描き出しているのに、かもし出す雰囲気はユーモラスでありエレガント。『描きこみ過ぎない絵柄』浮かび上がる独特の作風は、海外ドラマのそれに似ている。
特別な人間が特殊能力を用いて解決する展開ではなく、登場人物はあくまで『市井の人々』。あかりを初め、中心になるのは厚労省の役人。他の推理ものなら『小役人』と嗤われるだろう彼らの、職務を全うしようとする心意気が、この物語の背筋をしゃんとさせてくれ、読んでて気持ちがいい。
それはオキナガも同じ。図らずも人外となってしまったが、特別な力があるわけでもない。時に暴走し、盲目的となる雪村の心に横たわる深い悲しみが、オキナガも我々人間と同じであると教えてくれている。
あかりと雪村の過去の因縁が結びつき、“羊殺し”を廻る物語がひとつの転機を迎えた本巻。この先どうなるかが楽しみでならない一冊です。
以下、だらだらとメモがてらの所見です。ネタバレ満載ですのでイヤな方はご注意ください。
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